Xenogl0ssia

退学浪人の闇を切り裂いた元高専生のブログですが技術系の文とかとかそういうのはないです。

気持ち悪いオタクの気持ち悪い私小説

疲れていた。立ち続け雑用を続けるといった内容の割に稼ぎの良い仕事だったが、それでも疲れることに変わりは無かった。夏の盛りも過ぎたのか、少し落ち着いた気温の中を歩いていた。
片手にはスマートフォンツイッター。延々と情報を吐き出す魔法の板切れに魅入られてしまった哀れな俺はこれを片時も離すことができないのである。画面を引っ張って、新しい文字列を読み込む。昔は歩くときは文庫本が友人であった。今はこれで済ましてしまっている。悪いことかどうかと問われれば、多分良くはない。
流れてくる文字列はたいてい取り留めのない、読むに値しないものであったが、それでもやめられない。延々と無意味に近似した文字を脳内に流し込む堕落した作業を続ける。不意に目に入ってくるものがあった。
「私、婚約しました」
 何気ない一言。それだけの一言に私は深く心を揺さぶられた。揺さぶられるだけの理由があった。裏切りではないか、と思ってしまったから。
 そも、俺は拗らせた童貞である。健全な発達をし損ねた失敗した人間であるから、人と人が一対一で好きになるなどということに、憧れを抱きこそすれどうすればいいのか皆目検討がつかない。憧れは憧れのまま誇大化し、やがて自分を苛むようになった。つまり、人を一対一出会いされない俺は確実に人でなしなのだと。
 自然、俺は似たような雰囲気の人間とつるむようになった。彼、あるいは彼女(ツイッターの人間なので性別までは詳しくない)もその手の人間で、その手の人間でありつつ含蓄のあるツイートに惹かれていた。そんなわけで繋がり、もうかれこれ数年になる。
 そんな奴が、婚約。先を越された?出し抜かれた?いや、裏切った。裏切った?何を勝手な。そう思ってるのは俺だけだろう。
 結局、そいつが婚約したことが嫌だったわけじゃない。そいつが婚約した、ということに裏切られた、と感じ、次いで呪いあれ、と願った、願ってしまった自らのみっともない姿を嫌悪し、そして結局自分がみっともないから嫌悪した。さらに、そんな考えは自己中心的極まりなく、だから自分がもっと嫌になる。自分のことを嫌悪する自分を嫌悪する。無限に続く自己嫌悪の輪。
 気がついたら俺は、そんなことを考えながら酒を開けていた。わかり易い、わかりやすすぎる逃避だった。だからといって止めるような殊勝な心がけもないので、ウイスキーの瓶を殻になるまでグラスに注ぎ、そして次は胃に流し込んだ。今日も厄日だ。