お前はまだモンストをe-Sportsでないと思っているのか
いきなりだがこの動画を見てほしい
https://youtu.be/0FHiYPDVKdw?t=2243
IeSF2018のデモンストレーション競技として採用されたモンスターストライク。その準決勝。JAPAN RED対夏夕夏景の試合は、ボス手前までJAPAN REDのミスのせいで数十秒の遅れが生まれていた。実況の二人も「よほどのことがない限り難しい」と断言する中、JAPAN REDは夏夕夏景が手こずっていたボス手前の敵を一撃で撃破し試合をひっくり返した。その瞬間僕は思わず叫んでいた。あまりに鮮やかな逆転。沸き立つ観客。その瞬間「これはe-Sportsだ、間違いない」と確信していた。
とはいえ世間の(といってもほぼ掲示板かツイッターだが)オタクの反応は「モンストがe-sportsとかwww」みたいな反応が大半だ。大きく分けてその背後には3つの理由がある。
まずひとつ目は、モンストがソシャゲ発であり、かつガチャゲーであるということ。ご存知の通りモンストはガチャが実装されており、課金により有用なキャラをゲットしなければe-Sportsとしてのスタートラインに立てない、というのはおかしいだろうという意見。
ふたつ目はモンストのゲーム性、競技性についての疑問。E-Sportsといえば代表は格闘ゲームやFPSという認識が多く、それらはしばしば「ゲーム性、競技性が高い」と称される。それらと並び立つような奥深さがモンストにあるのか、という話。
みっつ目は、これはモンストの直接的な問題ではないので正直言ってどうしようもないのだが、モンストをe-Sportsと公式に宣言したJeSU(日本eスポーツ連合)に対する不信感。先にこの点について個人的な結論を述べておくと、多くの利権や金の流れに対する疑問点、さらには本当にe-Sports発展を願っているのか?などという抽象的な、しかし最も重要な信念に対する姿勢の不透明さがJeSUを胡散臭いものとしているのは事実であると思う。が、モンストがe-Sportsかどうか、という本筋にはあまり関係がないので割愛する.
さて、問題点をまとめたところで解説、の前にだが、俺は誓ってモンストのステマ員でもない。なんなら数日前までモンストをインストールしてないどころか、e-Sportsと言うのはちょっとなぁ……と思っていた人間である。プレイしてきたゲームもWoT、CSGO、CoDと言う、e-SportsのFPS関係のゲームとしては有力なゲームをプレイしてきたし、それらはe-Sportsであると思っている。*1そんなFPSマンセーだった1e-Sportsファンの意見である、ということ覚えておいてもらいたい。
ひとつ目、課金についての話
これについては単純明快な答えがある。通常の課金ありのRPG形式のモンスターストライクの他に、モンスターストライクスタジアム、という対戦用のスピンオフが存在するのだ。
このモンスターストライクスタジアム(以下モンストスタジアム)だが、かなり数のユニットが*2最大まで強化された状態で、しかも”無料”で使用できる。そう、無料。以前はどうやらモンスト本編の方とひも付き、そこで育てたユニットしか使えなかったそうだが、現在は思い立ったらすぐインストールしゲームすることが可能である。
この「ほぼすべてのユニットが最大強化状態で自由に使用できるゲームを、公式が無料で配信している」という状況。実はとんでもないことをしている。例えば、WoTには「スーパーアカウント」というものが存在している。これはほぼ公式大会かそれに準ずる規模のイベントでのみ使用されるアカウントで、すべての戦車や兵士の育成が完了しているアカウントである。基本的には試遊台が、さもなくば地域トップクラスの選手しか利用できないアカウントであり、一般人にはまず触れる機会がない。*3
そんなWoTでいうところのスーパーアカウントが、平然とアプリストアに存在している。とんでもないことだ。WoTの戦車や兵士の育成は非常に時間と金と、それから時間がかかり、なんなら運営の収入源であるわけだが、モンスト運営はそれをぶん投げた。それよりも、どんなプレイヤーであろうと同じ土俵に上がれる環境を用意することを優先したのだ。ここから、運営がモンストを本気でe-Sportsにしようとしているのが伺える。
つまり、モンストにe-Sportsとして参入しようとした場合、課金は一切必要ないのだ。もちろん、本編をプレイしたほうがプレイングやキャラクターに対する考察の深みに差が出ることはあるだろうが、少なくとも札束で殴り合うゲームではないというのはわかるだろう。
ふたつ目。ゲーム性や競技性の話。
まず重要なのが「ゲーム性とはなんぞや」「競技性とはなんぞや」という話である。ここを定義しない限りこの手の議論は横滑りを続けること必至である。
これは完全に筆者の私見であるが、ゲーム性とは「如何にダメージを叩き出すか」であり、競技性とは「相手にダメージを与え差をつけることがどの程度プレイヤーの手でできるか」という定義をしている。
まずはゲーム性について。ゲームの原初の喜びとはなにか、それを語るときに、俺は「ダメージが多く出せること」であると言う。相棒のゼニガメがたいあたり2発で倒していた序盤ポケモンをみずでっぽう一発で倒せるようになったとき。素材が足りねぇと嘆きながら苦労して完成させた上位武器でモンスターをぶん殴り、以前より素早く討伐できるようになったとき、マーリン孔明でバフを掛けまくりながらボスを殴り飛ばすとき、マトモに当たらなかったAKを初めて敵の頭にブチ込み一撃で殺したとき。ゲームにおける究極的な面白さとは「ダメージ」であり、ならばダメージを出すということそのものがゲーム性であるといえる。
では、競技性とはなんだろうか。「ダメージを与え差をつけることがどの程度プレイヤーの手でできるか」と言ったが、これは個人的には3つの要素に分けられると考えている。一つはユニットの選択、一つはプレイヤーのスキル、一つは対戦相手の傾向の読み、この3つだ。一つづつ見ていこう。
まず、ユニットの選択、どのユニットを使うのが最も強いのか、ということはゲームをプレイする人間であるなら当然であろう。次に、プレイヤーのスキル。プレイヤーがゲームに対し、何をどうすればこういう風に動くのか、こういう風に動かすからこのユニットは強くなるのだ、ということに対する理解と反復練習である。最後に、読み。相手はこれを使うだろうからカウンターとしての策を用意する、など。そういうメタ的な攻め方。以上三点が絡み合い、競技性の高低という概念を生み出していると考えている。
つまり、ゲーム性とは如何にダメージを出すか、であり、競技性とはそのダメージを出すためにプレイヤーができることの幅がどうなっているのか、という話である。*4
ゲーム性という意味ではモンストは間違いなく問題ないだろう。本編もモンストスタジアムも、如何に敵にダメージを与えるかというものであり、わかりやすく「ゲーム性」というものを満たしている。
では、競技性という意味ではどうか、と問われるとこれは若干苦しいものがある。一つづつ見ていこう。
まずはユニットの選択。これに関しては全く問題ない。モンストスタジアムでは膨大な、数日前にモンストスタジアムをインストールした身からするとめまいを覚えるほどのユニットが収録されている。また、競技の際のステージも様々であり、敵もステージごとに大きく異なるため、ユニット選択という点ではかなり幅が存在し、悪くないと言えるのではないだろうか。
次に、プレイヤーのスキル。これに関しても大きくは問題ないだろう。確かに「引っ張って、離す」だけの操作はWASDをガチャガチャやるゲームに比べてプレイヤースキルの要素が少なく見えるかもしれない。しかし、どこをどうぶつけ、敵の出現位置を加味し移動させつつ、敵を効率よく撃破、というのは短期間で習得できるようなものではない。よってこれも取り上げるべきではない。
問題は「読み合い」に関わる諸要素である。モンストスタジアムの対戦形式はタイムアタック、つまり「用意された敵をどれだけ早く倒すか」が求められるゲームであり、ここにプレイヤー間の読み合いという要素は発生しない。一応、公式大会などではピック制が採用され、どのユニットを取るのか、という読み合いが発生しないでもないが、しかしこれを以て問題ない、と言い切るのは苦しいものがあるだろう。
つまり、、「モンストに競技性がない、低い」という批判は、競技性の3要素のうち「読み合い」に関するものがゴッソリ抜け落ちているからだ、というにほかならない。これに関しては覆りようのない事実としか言いようがない。
……だがそれは、本当に問題があるのか?
「ドラマ」を求めている。
僕らはe-Sportsに、もっと言えばスポーツに何を求めているのだろう。競技する側としては、それは間違いなく勝利である。けれども、見てる僕らが求めるもの、それは多分、「ドラマ」なんだろう。格闘ゲームで人間性能まで読みあい、もぎ取る勝利。CS:GOで、一人にまで追い込まれたチームのプレイヤーが魅せるACE、ロケットリーグで理解できないレベルのトリックショットを決める。そんな「すげぇ」という思いが、ゲームを見ている僕らが一番求めているものではないのか。
何が言いたいかというと、ドラマが存在するなら、e-Sportsとしてやっていける、ということだ。確かに人同士の読み合いのぶつかり合いは面白い。そこから生まれるドラマ性という甘美さは抗いがたいものがある。ときどvsPUNKのような、相手の人間性能の高さまで組み込んだ完璧な読みを以て最強候補を下した話など胸が震える。だが、読み合いだけがドラマを生むわけじゃない。現に僕は最初の動画の、JAPAN REDが逆転するシーンで思わず叫んだし、ガッツポーズまでしちゃっているのだ。これをドラマと言わずしてなんというのだ。
モンストは見ていて「すっげぇ!」と思えることができるゲームなのだ。そのドラマ性があって、そして「ちょっとやってみようかな」と思う人々がいる限り、モンストはe-Sportsとして続いていくことができるだろう。